お正月気分も少し落ち着く1月中旬、「小正月(こしょうがつ)」という言葉を耳にしたことはありませんか? 「聞いたことはあるけど、何をする日なの?」「お正月とは違うの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。
小正月は、日本の伝統的な風習が今も残る大切な一日です。特に、この日に食べる「行事食」には、家族の健康や豊作を願う古くからの祈りが込められています。
この記事では、小正月の中心的な食べ物である「小豆粥(あずきがゆ)」をはじめ、その由来や意味、地域ごとの風習について分かりやすく解説します。家庭で簡単に作れるレシピも紹介するので、ぜひご家族や周りの人たちと一緒に日本の文化に触れてみてください。
小正月とは?1月15日に行う正月行事
まずは、小正月がどのような日なのか、基本的な情報から見ていきましょう。
小正月はいつ?基本は1月15日
小正月は、基本的に1月15日を指します。かつて使われていた旧暦では、この日がその年の最初の満月の日にあたり、年の初めの重要な節目とされていました。
元日を中心とした正月を「大正月(おおしょうがつ)」と呼ぶのに対し、1月15日を「小正月」と呼び、今でも様々な行事が行われています。
大正月(元旦)との役割の違い
大正月と小正月は、その目的や過ごし方に違いがあります。
■大正月(1月1日〜7日頃)
新年の神様である「年神様(としがみさま)」を家に迎え入れ、盛大にお祝いする期間です。門松やしめ縄を飾り、おせち料理やお雑煮を食べるのが特徴です。
■小正月(1月15日)
年神様を迎える行事が一段落し、家庭内で家族の健康や豊作を祈る行事が中心となります。大正月が「神様のための行事」なら、小正月は「人のための行事」とも言えるでしょう。
「女正月」や「花正月」とも呼ばれる理由
小正月には、素敵な別名もあります。
一つは「女正月(おんなしょうがつ)」です。これは、大正月の間、食事の準備などで忙しく働いた女性をねぎらい、ようやく一息つける日という意味が込められています。
もう一つは「花正月(はなしょうがつ)」です。この時期に「餅花(もちばな)」という紅白の餅をつけた飾り物をする地域が多く、その見た目の華やかさからこう呼ばれるようになりました。
小正月に食べるもの一覧
それでは、小正月には具体的にどのようなものを食べるのでしょうか。代表的な行事食をご紹介します。
邪気を払う「小豆粥(あずきがゆ)」
小正月の最も代表的な食べ物が「小豆粥」です。小豆の赤い色には邪気を払う力があると信じられており、これを食べることで一年間の無病息災を願います。
お米と小豆を一緒に炊いた優しい味わいのお粥で、冷えた体を温めてくれます。
豊作を願う「餅」や「団子」
米の粉で作ったお餅や団子も、小正月の重要な食べ物です。特に、柳などの枝に紅白の餅や団子を飾り付ける「餅花」は、稲穂に見立ててその年の五穀豊穣を祈る意味があります。
飾った後のお餅は、焼いたり揚げたりして食べるのが一般的です。
どんど焼きで焼いて食べるお餅や団子
地域の神社などで行われる「どんど焼き(左義長)」の火で焼いたお餅や団子を食べると、その一年を健康に過ごせる、火事にならないといった言い伝えがあります。
家族で火を囲み、焼きたてのお餅をいただくのも小正月の楽しみの一つです。
地域によって異なるその他の行事食
全国的に小豆粥が食べられますが、地域によっては他のものを食べる風習もあります。
■ぜんざい・おしるこ
関西地方などでは、小豆粥の代わりにぜんざいやおしるこを食べる地域もあります。鏡開きの餅を使って作る家庭も多いようです。
■納豆汁
山形県などの雪深い地域では、すりつぶした納豆を入れた「納豆汁」を食べる風習があります。
■けんちん汁
神奈川県の鎌倉が発祥とされていて、今では日本各地の郷土料理となっている野菜がたっぷり入った「けんちん汁」を食べることもあります。
お住まいの地域にどんな風習があるか、調べてみるのも面白いかもしれません。
代表的な行事食「小豆粥」の由来と意味
なぜ小正月に小豆粥を食べるのでしょうか。その背景にある由来や意味を詳しく見ていきましょう。
一年の無病息災を願う風習
古くから、小豆の赤い色には魔除けや邪気を払う力があると信じられてきました。
そのため、年の初めである小正月に小豆粥を食べることで、その年に起こるかもしれない病気や災いを遠ざけ、家族みんなが健康でいられるようにという「無病息災」の願いが込められています。
中国の故事に由来する魔除けの効果
小豆粥の風習は、中国の古い物語に由来するという説もあります。
昔、共工(きょうこう)という人物の息子が、言うことを聞かない悪い子で、亡くなった後に疫病神(やくびょうがみ)になってしまいました。しかし、その息子は生前から小豆を嫌っていたため、人々は小豆を炊いて疫病神が寄り付かないようにした、というお話です。
この物語が日本に伝わり、小豆が魔除けの食べ物として定着したと言われています。
1月15日の朝に食べるのが一般的
小豆粥を食べるタイミングは、一般的に1月15日の朝とされています。
一年の始まりの節目に、家族そろって温かいお粥をいただき、その年の健康を祈願するのが伝統的な習わしです。
家庭で簡単!小豆粥の作り方・レシピ
「小豆粥って作るのが難しそう…」と感じるかもしれませんが、実は家庭でも簡単に作れます。基本的な作り方と、炊飯器を使ったお手軽な方法をご紹介します。
準備する材料(米・小豆・塩・水)
・お米:1合(150g)
・乾燥小豆:30g〜50g(お好みで)
・水:お米の5〜7倍量(全粥の場合:約900ml)
・塩:少々
・お餅(お好みで):1〜2個
基本的な調理手順
■1:小豆の下準備
小豆をさっと洗い、鍋に小豆とたっぷりの水(分量外)を入れて火にかけます。沸騰したら一度お湯を捨て(渋きり)、もう一度水を入れて小豆が指で軽く潰せるくらいまで柔らかく煮ます。
■2:お米を炊く
土鍋や深めの鍋に、洗ったお米と分量の水、柔らかく煮た小豆を煮汁ごと入れます。
■3:煮込む
最初は強火にかけ、沸騰したら弱火にして、蓋を少しずらして30〜40分ほどコトコト煮込みます。焦げ付かないように、時々底からそっとかき混ぜてください。
■4:蒸らして完成
お米がふっくらと炊き上がったら火を止め、蓋をして10分ほど蒸らします。最後に塩で味を調え、お好みで焼いたお餅を乗せれば完成です。
炊飯器で作る簡単な方法
もっと手軽に作りたい場合は、炊飯器の「お粥モード」が便利です。
■1
洗ったお米と、下茹でした小豆(または小豆の缶詰)、お粥モードの目盛りに合わせた水を炊飯器の内釜に入れます。
■2
「お粥」のスイッチを入れて炊飯します。
■3
炊き上がったら軽く混ぜ、塩で味を調えて完成です。
炊飯器を使えば、火加減を気にする必要がなく失敗しにくいので、忙しい方や料理が苦手な方にもおすすめです。
食べ物以外の小正月の風習と飾り物
小正月には、食べ物以外にも特徴的な風習や飾り物があります。
どんど焼き(左義長)で正月飾りを燃やす
「どんど焼き」とは、お正月に飾った門松やしめ縄、書初めなどを集めて燃やす火祭りのことです。「左義長(さぎちょう)」とも呼ばれます。
この火は、お正月の間に家に迎えていた年神様を天にお見送りするための儀式とされています。どんど焼きの煙に乗って神様が帰っていくと考えられているのです。
餅花(もちばな)飾りの意味と飾り方
「餅花」とは、柳や梅、ミズキなどの木の枝に、紅白の小さなお餅や団子をたくさんつけた飾り物です。これは、冬枯れの時期に満開の花が咲いたように見せることで、穀物の豊かな実りを祈願する「予祝(よしゅく)」の行事です。
カラフルで可愛らしい見た目から「花正月」の由来にもなっており、家の中を明るく彩ってくれます。
小正月飾りはいつまで?片付ける時期
餅花などの小正月の飾りは、一般的に小正月が終わる1月15日や、どんど焼きが行われる日に片付けます。
飾っていたお餅は、火で炙ったり油で揚げたりして食べることで、神様の力を体内に取り込み、一年間の健康と豊作を願います。
よくある質問
最後に、小正月についてよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 小正月に贈るものは何がいい?
A. 小正月に特化した贈り物の風習はあまりありません。 大正月のお年賀とは異なり、小正月は家庭内の行事という側面が強いためです。もし親しい間柄で何かを贈りたい場合は、季節の和菓子や、小豆を使ったお菓子などが喜ばれるかもしれません。
Q. 小豆粥を食べる地域に違いはある?
A. 全国的に見られる風習ですが、一部地域では食べないこともあります。 小豆粥は広く知られていますが、東北地方の「納豆汁」や関西地方の「ぜんざい」のように、地域独自の行事食が根付いている場所もあります。また、同じ小豆粥でも「十五日粥(じゅうごにちがゆ)」など、呼び名が異なる場合もあります。
Q. 二十日正月とは何が違うの?
A. 「二十日正月(はつかしょうがつ)」は1月20日に行われる、正月を締めくくる行事です。
小正月が正月行事の「折り返し」だとすれば、二十日正月は「最終日」にあたります。この日をもって正月の飾り物をすべて片付ける地域が多く、「骨正月」や「頭正月」と呼び、正月に食べた魚の骨や頭まで煮つけなどにして食べ尽くす風習もあります。
小正月が正月行事の「折り返し」だとすれば、二十日正月は「最終日」にあたります。この日をもって正月の飾り物をすべて片付ける地域が多く、「骨正月」や「頭正月」と呼び、正月に食べた魚の骨や頭まで煮つけなどにして食べ尽くす風習もあります。
まとめ
今回は、小正月の食べ物や風習についてご紹介しました。
・小正月は1月15日に行われる家庭的な正月行事
・代表的な食べ物は、無病息災を願う「小豆粥」
・小豆粥は、小豆の赤い色で邪気を払うという意味が込められている
・その他、どんど焼きや餅花飾りといった風習もある
大正月のような派手さはありませんが、小正月には家族の健康を静かに祈る、温かい伝統が息づいています。今年の1月15日には、ぜひご家庭で小豆粥を作って、日本の季節行事を楽しんでみてはいかがでしょうか。
