夏の風物詩といえば、涼しげな「流しそうめん」。しかし、そのスタイルや食べ方が地域によって大きく異なることをご存知でしょうか?
「テレビで見た、そうめんにみかんを入れるのはどこの地域?」「旅行先の鹿児島で美味しい流しそうめんを食べたい!」
そんなあなたの疑問や要望にこの記事がすべてお答えします。定番の竹樋スタイルから、鹿児島名物の円卓型、さらには驚きの具材や薬味まで、地域色豊かな流しそうめんの世界を徹底解説。
この記事を読めば、きっと次の休日に訪れたい、あなたにぴったりの流しそうめんが見つかるはずです。
流しそうめんの地域によるスタイルの違い

一口に「流しそうめん」と言っても、実は地域によってそのスタイルは様々です。
ここでは、代表的な2つのスタイルと、器や提供方法に見る地域ごとの特色をご紹介します。
鹿児島の円卓型「そうめん流し」
鹿児島県、特に指宿市の唐船峡(とうせんきょう)が発祥の地とされるのが、円卓型の「そうめん流し」です。 ドーナツ状の器の中で水がぐるぐると回転し、その流れにそうめんを投入して楽しみます。
■自分のペースで食べられる
竹樋の流しそうめんのように、一瞬で通り過ぎてしまう心配がありません。小さなお子様からご年配の方まで、自分のペースでゆっくりと楽しめます。
■省スペースで楽しめる
長い竹樋を設置する必要がないため、比較的コンパクトなスペースで楽しむことができます。
■甘めのつゆが特徴
鹿児島のそうめん流しでは、カツオ出汁に醤油やみりんを加えた、少し甘めのつゆが主流です。このつゆがそうめんと絶妙に絡み合います。
竹樋を流れる一般的な「流しそうめん」
多くの人が「流しそうめん」と聞いてイメージするのが、半分に割った長い竹樋を使い、高低差を利用してそうめんを流すスタイルです。 風情があり、夏のイベント感を満喫できるのが最大の魅力。
京都の貴船や、豊かな自然に恵まれた熊本県の阿蘇地方など、美しい景観の中で楽しめるスポットが全国に点在しています。
京都の貴船や、豊かな自然に恵まれた熊本県の阿蘇地方など、美しい景観の中で楽しめるスポットが全国に点在しています。
流れてくるそうめんをキャッチするエンターテイメント性も高く、友人や家族と盛り上がること間違いなしです。
器や提供方法に見る地域ごとの特色
そうめんのスタイルだけでなく、器や一緒に提供される料理にも地域性が表れます。
■つゆの器
猪口(ちょこ)が一般的ですが、地域によってはガラスの器や陶器の小鉢など、涼しさを演出する工夫が見られます。
■サイドメニュー
鹿児島の唐船峡では、名水で育った鯉のあらい(刺身)や塩焼きが定番メニューです。また、おにぎりや天ぷらがセットになっているお店も多くあります。
■薬味の提供方法
薬味は小皿で提供されるのが一般的ですが、つゆに最初からネギや生姜が入っている地域もあります。
日本三大そうめん

流しそうめんを楽しむなら、そうめんそのものにも注目してみましょう。日本には古くから受け継がれる有名なそうめんの産地があり、「日本三大そうめん」と呼ばれています。
兵庫県:播州そうめん
国内生産量トップクラスを誇る、コシの強さが特徴のそうめんです。 兵庫県南西部、揖保川流域で作られており、「揖保乃糸」のブランドで広く知られています。
伝統的な製法で丁寧に作られ、しっかりとした歯ごたえと滑らかなのどごしが楽しめます。
伝統的な製法で丁寧に作られ、しっかりとした歯ごたえと滑らかなのどごしが楽しめます。
奈良県:三輪そうめん
そうめん発祥の地ともいわれる奈良県桜井市を中心とした三輪地方で作られる、歴史あるそうめんです。 極細でありながらもしっかりとしたコシがあり、上品な味わいが特徴。
その細さから、茹で時間が短く、繊細なのどごしを堪能できます。
その細さから、茹で時間が短く、繊細なのどごしを堪能できます。
香川県:小豆島そうめん
瀬戸内海に浮かぶ小豆島で作られる、ごま油を使った製法が特徴のそうめんです。 麺を延ばす工程で純正ごま油を使用するため、ほんのりとした風味と、酸化しにくく品質が保たれやすいという利点があります。
つるりとした食感と独特の風味が魅力です。
つるりとした食感と独特の風味が魅力です。
全国のユニークなそうめん

定番の流しそうめん以外にも、全国にはあっと驚くようなユニークなそうめん文化が存在します。
旅行の目的になること間違いなしの、個性豊かなそうめんをご紹介します。
旅行の目的になること間違いなしの、個性豊かなそうめんをご紹介します。
京都府:貴船の川床そうめん
京都の奥座敷、貴船では、川の真上に作られた「川床(かわどこ)」で涼みながら流しそうめんを味わうという、なんとも風流な体験ができます。
せせらぎを聞きながらいただくそうめんは格別。夏の京都観光で、特別なひとときを過ごしたい方におすすめです。
せせらぎを聞きながらいただくそうめんは格別。夏の京都観光で、特別なひとときを過ごしたい方におすすめです。
愛媛県:宇和島名物の鯛そうめん
愛媛県宇和島市周辺に伝わる、お祝いの席には欠かせない豪華な郷土料理が「鯛そうめん」です。
大皿に茹でたそうめんを盛り付け、その中央に甘辛く煮付けた鯛を丸ごと一匹乗せた、見た目も華やかな一品。流しそうめんとは異なりますが、地域のそうめん文化として知られています。
大皿に茹でたそうめんを盛り付け、その中央に甘辛く煮付けた鯛を丸ごと一匹乗せた、見た目も華やかな一品。流しそうめんとは異なりますが、地域のそうめん文化として知られています。
柑橘類の産地である愛媛では、そうめんの付け合わせやデザートとしてみかんなどの柑橘類が添えられることがあります。また、一部の家庭やお店では、つゆの中に缶詰のみかんやさくらんぼを入れて、味のアクセントとして楽しむ文化もあるようです。甘じょっぱさがクセになる、意外な組み合わせです。
関西各県:冷やし中華風そうめん
関西地方の家庭では、そうめんを冷やし中華のようにして食べることがあります。
茹でたそうめんの上に、錦糸卵、ハム、きゅうりの千切りなどを彩りよく盛り付け、冷やし中華のタレやめんつゆをかけていただきます。食欲がない夏でもさっぱりと食べられるアレンジです。
茹でたそうめんの上に、錦糸卵、ハム、きゅうりの千切りなどを彩りよく盛り付け、冷やし中華のタレやめんつゆをかけていただきます。食欲がない夏でもさっぱりと食べられるアレンジです。
石川県:茄子そうめん
石川県では、夏野菜の茄子をくたくたになるまで煮込んだ温かい汁でそうめんを食べる「茄子そうめん」が郷土料理として親しまれています。
茄子の甘みと旨味が溶け出した汁がそうめんに絡み、どこか懐かしい味わいです。
茄子の甘みと旨味が溶け出した汁がそうめんに絡み、どこか懐かしい味わいです。
栃木県:苺そうめん
「そうめんにフルーツ」という組み合わせはみかんだけではありません。苺の生産量日本一を誇る栃木県では、変わり種の「苺そうめん」が登場することがあります。
苺を練り込んだピンク色の麺や、デザート感覚で楽しむ冷たいそうめんなど、お店によってスタイルは様々。見た目も可愛らしく、新しいそうめんの可能性を感じさせます。
苺を練り込んだピンク色の麺や、デザート感覚で楽しむ冷たいそうめんなど、お店によってスタイルは様々。見た目も可愛らしく、新しいそうめんの可能性を感じさせます。
大分県:かぼす麺
柑橘系の爽やかさを楽しむなら、かぼすの生産が盛んな大分県の「かぼす麺」もおすすめです。
かぼすの果汁や皮を練り込んだ緑色の麺は、見た目も涼やかで、口に入れるとかぼすの爽やかな香りが広がります。つゆにキュッと絞っていただくのも絶品です。
かぼすの果汁や皮を練り込んだ緑色の麺は、見た目も涼やかで、口に入れるとかぼすの爽やかな香りが広がります。つゆにキュッと絞っていただくのも絶品です。
そうめんの薬味

そうめんの味わいを引き立てる名脇役「薬味」。この薬味にも、実は地域性が色濃く反映されています。
定番の中の定番「ねぎ」
全国的に最もポピュラーな薬味といえば、やはり「ねぎ」でしょう。
小口切りにした万能ねぎや青ねぎが一般的で、その爽やかな香りとシャキシャキとした食感が、そうめんの味を一層引き立てます。
小口切りにした万能ねぎや青ねぎが一般的で、その爽やかな香りとシャキシャキとした食感が、そうめんの味を一層引き立てます。
静岡や長野で定番の「生わさび」
わさびの産地として名高い静岡県伊豆地方や長野県安曇野地方では、薬味の主役は「生わさび」です。
自分ですりおろしたばかりの生わさびは、ツーンとした辛さの中にほのかな甘みと豊かな香りがあり、チューブのわさびとは全くの別物。清らかな水で育ったわさびとそうめんの組み合わせは、まさに産地ならではの贅沢です。
自分ですりおろしたばかりの生わさびは、ツーンとした辛さの中にほのかな甘みと豊かな香りがあり、チューブのわさびとは全くの別物。清らかな水で育ったわさびとそうめんの組み合わせは、まさに産地ならではの贅沢です。
高知の「生姜」と「ミョウガ」
生姜の生産量日本一を誇る高知県では、薬味に「生姜」が欠かせません。
すりおろしたての生姜のピリッとした辛味と爽やかな香りが、食欲を増進させてくれます。また、同じく夏が旬の「ミョウガ」も高知県では定番の薬味。独特の風味と食感が、そうめんの良いアクセントになります。
すりおろしたての生姜のピリッとした辛味と爽やかな香りが、食欲を増進させてくれます。また、同じく夏が旬の「ミョウガ」も高知県では定番の薬味。独特の風味と食感が、そうめんの良いアクセントになります。
意外に合う「しそ」
爽やかな香りが特徴の「しそ(大葉)」も、そうめんと相性抜群の薬味です。
千切りにしたしそをたっぷり加えるだけで、いつものそうめんが料亭のような上品な味わいに変わります。家庭でも手軽に試せるおすすめのアレンジです。
千切りにしたしそをたっぷり加えるだけで、いつものそうめんが料亭のような上品な味わいに変わります。家庭でも手軽に試せるおすすめのアレンジです。
まとめ

流しそうめんは、ただ食べるだけでなく、その土地の文化や歴史に触れることができる素晴らしい食体験です。
次の旅行では、ぜひその地域ならではの流しそうめんを味わってみてはいかがでしょうか。きっと、忘れられない夏の思い出が作れるはずです。