キャンプや登山で大活躍の寝袋(シュラフ)。使っているうちに汗や汚れ、ニオイが気になってきませんか?「そろそろ洗いたいけど、洗い方がわからない」「高価なダウンの寝袋をダメにしてしまわないか不安…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
寝袋はデリケートな製品ですが、正しい手順で洗濯すれば、清潔さを取り戻し、保温性能を回復させることも可能です。この記事では、初心者の方でも安心して実践できるよう、寝袋の洗濯方法を素材別に徹底解説します。
寝袋を洗濯する前に確認すべき3つのこと
寝袋の洗濯を始める前に、必ず確認しておきたい3つのポイントがあります。この準備を怠ると、寝袋の性能を損なう原因になりかねません。
洗濯表示の見方とチェックポイント
まず最初に、寝袋についている洗濯表示タグを必ず確認してください。ここには、メーカーが推奨する洗い方が記されています。
■洗濯桶のマーク
洗濯機や手洗いができるかどうかを示します。桶に×印があれば家庭での洗濯はできません。桶の中に手が入っているマークは「手洗いができる」です。
■三角形のマーク
漂白剤(酸素系漂白剤は使用可、塩素系と酸素系どちらも使用可、など)が使えるかどうかを示します。基本的に寝袋に塩素系・酸素系漂白剤は使えません。
■四角形のマーク
乾燥の方法を示します。四角形の中に丸があるものは「タンブル乾燥(ドラム式洗濯乾燥機やコインランドリーの乾燥機など)」が可能であることを意味します。×印があればタンブル乾燥は不可です。
■アイロンのマーク
アイロンが使えるかどうかを示します。寝袋にアイロンをかけることはまずありません。
洗濯表示と合わせて、生地に破れやほつれがないかもチェックしましょう。小さな穴でも、洗濯中に広がって中綿が飛び出してしまう危険があります。もし破損箇所があれば、洗濯前にリペアシートなどで補修しておきましょう。また、洗濯中に生地を傷めないよう、ジッパーやボタンはすべて閉めておくのが基本です。
ダウン・化繊用おすすめ専用洗剤
寝袋の洗濯には、必ずダウン用または化繊用の専用洗剤(もしくは家庭用の中性洗剤)を使用してください。普段使っている一般の洗濯洗剤は洗浄力が強く、羽毛の持つ天然の油分まで落としてしまい、保温力(ロフト)が著しく低下する原因になります。
■ダウン(羽毛)用洗剤
ダウンの油分を保ちながら汚れを落とすように作られています。すすぎ性能も高く、洗剤が残りにくいのが特徴です。
■化繊用洗剤
化学繊維の汚れを効果的に落とし、機能を損なわないように作られています。
洗濯ネットやブラシなど必要な道具
自宅で洗濯する場合、以下の道具を準備しておくとスムーズです。
■大型の洗濯ネット
洗濯機で洗う際に、寝袋が絡まったり生地が傷んだりするのを防ぎます。寝袋がゆったり入る大きめのサイズを選びましょう。
■柔らかいブラシ
襟元や足元など、特に汚れがひどい部分の予洗いに使います。歯ブラシなどでも代用可能です。
■浴槽または大きなタライ
手洗いする場合に必要です。寝袋が十分に浸かる大きさのものを用意してください。
洗濯機での寝袋の洗い方|素材別の手順
洗濯表示で「洗濯機洗い可」となっている場合は、自宅の洗濯機で洗うことができます。ただし、縦型洗濯機は水流が強く生地を傷める可能性があるため、ドラム式洗濯機での洗濯が推奨されます。
ダウン製寝袋の洗濯手順
高価なダウン製寝袋は特に慎重に扱いましょう。洗濯からすすぎ、脱水まで丁寧に行うことが重要です。
■1:予洗い
襟元や足元など、皮脂汚れがつきやすい部分に専用洗剤の原液を少量つけ、柔らかいブラシで優しく叩くようにして汚れを浮かせます。
■2:洗濯ネットに入れる
寝袋のジッパーを閉め、空気を抜きながら畳み、大型の洗濯ネットに入れます。
■3:洗濯機で洗う
洗濯機に寝袋を入れ、規定量のダウン専用洗剤を投入します。
■4:コース選択
「手洗いコース」「おしゃれ着コース」「ドライコース」など、最も水流の弱いコースを選んで洗濯を開始します。
■5:すすぎ
洗剤が残ると保温力低下の原因になるため、すすぎは2〜3回追加して念入りに行いましょう。
■6:脱水
脱水は生地や縫製に大きな負担がかかります。脱水時間は1分以内の最短時間に設定してください。
推奨の洗濯コースと注意点
寝袋を洗濯機で洗う際は、「優しく洗い、しっかりすすぐ」が鉄則です。
■推奨コース
手洗い、ドライ、おしゃれ着、毛布など、とにかく水流が弱いコースを選んでください。
■洗剤の量
洗剤は多すぎても少なすぎてもいけません。必ずパッケージに記載された使用量を守りましょう。
■乾燥機能の利用
洗濯乾燥機の場合でも、洗濯から乾燥まで一貫して行う「自動コース」は絶対に使用しないでください。高温で一気に乾かすと、生地や中綿が深刻なダメージを受ける可能性があります。
コインランドリー利用時の注意点
自宅の洗濯機が小さい場合や、よりパワフルな乾燥機を使いたい場合は、コインランドリーの利用も有効な選択肢です。
■洗濯機を選ぶ
生地への負担が少ないドラム式の洗濯機を選びましょう。
■洗剤は持参する
備え付けの洗剤は洗浄力が強すぎるため、必ず自宅から持参した専用洗剤を使用してください。
■乾燥機の温度設定
乾燥機を使う際は、必ず「低温」設定を選びます。高温設定は絶対に避けてください。
手洗いでの寝袋の洗い方|素材別の手順
洗濯表示が「手洗いのみ」の場合や、洗濯機洗いが不安な方は、浴槽を使った手洗いがおすすめです。生地への負担が最も少ない方法です。
ダウン製寝袋の手洗い手順
ダウンの性能を損なわないよう、優しく丁寧に洗うことが何よりも大切です。
■1:洗浄液を作る
浴槽に30℃程度のぬるま湯を張り、規定量のダウン専用洗剤を溶かします。
■2:押し洗いする
寝袋を洗浄液に浸し、優しく沈めたり浮かせたりを繰り返す「押し洗い」で洗います。生地を傷めるので、揉んだりこすったりしないでください。
■3:すすぐ
汚れた洗浄液を抜き、きれいなぬるま湯を張って再度押し洗いをします。泡や汚れが出なくなるまで、最低でも3〜4回は水を入れ替えて徹底的にすすぎましょう。
■4:水気を切る
すすぎが終わったら、浴槽の縁に寝袋をかけて30分〜1時間ほど置き、自然に水気を切ります。その後、バスタオルなどで挟んで残った水分を吸い取ります。絶対に雑巾のように絞らないでください。
化繊製寝袋の手洗い手順
化繊製寝袋も、ダウンと同様の手順で手洗いします。ダウンほど神経質になる必要はありませんが、押し洗いが基本です。
■1:洗浄液を作り、押し洗いする
浴槽にぬるま湯と専用洗剤を溶かし、優しく押し洗いします。
■2:すすぐ
洗剤が残らないよう、きれいな水で2〜3回すすぎます。
■3:水気を切る
浴槽の縁で水気を切り、バスタオルで水分を吸い取ります。
押し洗いのコツとすすぎのポイント
手洗いで最も重要なのが「押し洗い」と「すすぎ」です。
■押し洗いのコツ
寝袋全体が洗浄液に浸かるように、上から優しく体重をかけて沈め、自然に浮き上がってくるのを待ちます。これを繰り返すことで、中綿の奥の汚れまで洗い流せます。足で踏み洗いすると生地や縫製に負担がかかるため、避けた方が無難です。
■すすぎのポイント
すすぎ残しは保温力低下やニオイの原因になります。特にダウンは洗剤が残りやすいため、「もう大丈夫かな?」と思ってから、さらにもう1回すすぐくらいの気持ちで行いましょう。
ふっくら復活させる寝袋の乾かし方
洗濯と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「乾燥」の工程です。ここで失敗すると、寝袋のふっくら感(ロフト)が失われてしまいます。
乾燥機の使い方と温度設定
ダウン製寝袋の洗濯表示で乾燥機が使用可能で、コインランドリーや家庭用の大型乾燥機が使える場合、最も効率的にふっくらと乾かすことができます。
(化繊維製の寝袋は熱に弱く中綿が劣化する恐れがあるため、乾燥機は使用しないでください)
(化繊維製の寝袋は熱に弱く中綿が劣化する恐れがあるため、乾燥機は使用しないでください)
■温度設定は必ず「低温」で
高温は生地を縮ませたり、中綿を傷めたりする最大の原因です。時間がかかっても、必ず低温設定を選んでください。
■テニスボールを一緒に入れる
乾燥機に寝袋と一緒に入れると、ボールが寝袋を叩いて中綿のダマを防ぎ、均一に乾かす手助けをしてくれます。きれいな硬式テニスボールを2〜3個、靴下などに入れて投入するのがおすすめです。
■途中で取り出してほぐす
完全に乾くまで、30分に1回程度は乾燥機から取り出し、寝袋全体をバサバサと振って中綿の偏りをほぐしてあげると、よりふっくらと仕上がります。
自然乾燥での正しい干し方
乾燥機が使えない場合は自然乾燥になりますが、完全に乾くまで数日〜1週間かかることを覚悟しておきましょう。
■風通しの良い日陰で干す
直射日光は紫外線で生地を傷める原因になります。必ず風通しの良い日陰を選んでください。
■平干しがベスト
物干し竿1本にかけると、重みで中綿が下に偏ってしまいます。複数の物干し竿に渡すようにかけたり、平干し用のネットを使ったりするのが理想的です。
■こまめにほぐす
乾いてきたら、手で優しく叩いたり、寝袋を振ったりして、固まっている中綿を丁寧にほぐしてください。この作業を繰り返すことで、乾燥後のふっくら感が大きく変わります。
布団乾燥機や撥水スプレーの活用
布団乾燥機
布団乾燥機は、自然乾燥の仕上げや、湿っぽい日の最終乾燥に使うと効果的です。濡れた状態から完全に乾かすのには向いていませんが、最後の湿気を飛ばしてふっくらさせるのに役立ちます。
撥水スプレー
洗濯によって、寝袋の表面に施されていた撥水加工は落ちてしまいます。完全に乾いた後、仕上げに撥水スプレーを全体に吹きかけておくと、次回の使用時に結露や汚れから寝袋を守ってくれます。必ず寝袋の素材に対応したスプレーを選びましょう。
よくある質問
最後に、寝袋の洗濯や手入れに関するよくある疑問にお答えします。
洗濯の頻度とタイミングの目安
寝袋の洗いすぎは、生地や中綿の寿命を縮める原因になります。明確な決まりはありませんが、以下のようなタイミングで洗濯を検討するのがおすすめです。
■シーズンオフの長期保管前
汚れを落としてから保管することで、カビやニオイの発生を防ぎます。
■汚れやニオイが明らかに気になるとき
汗をたくさんかいた後や、食べこぼしなどで汚してしまった場合。
■保温力が落ちてきたと感じるとき
皮脂や湿気でダウンが固まると保温力が低下します。洗濯することでふっくら感が戻り、保温力が回復することがあります。
特に気にならなければ、年に1回程度、もしくは30〜50泊程度の使用ごとが一般的な目安です。
洗濯後の保管方法と普段の手入れ
寝袋を長持ちさせるには、洗濯後の保管方法と普段の手入れも非常に重要です。
■保管方法
購入時に付属してくる小さなスタッフバッグは、あくまで持ち運び用です。長期保管の際は、より大きな「ストレージバッグ」に入れ、ふんわりとさせた状態で保管してください。押し潰された状態が続くと、中綿のロフト(かさ高)が回復しなくなり、保温力が失われます。風通しの良い、湿気の少ない場所で保管しましょう。
■普段の手入れ
使用後は、必ず裏返して風に当て、汗などの湿気を完全に乾かすことが大切です。また、「シュラフカバー」や「インナーシーツ」を併用すると、寝袋本体の汚れを大幅に軽減でき、洗濯の頻度を減らすことができます。
まとめ
正しいメンテナンスを行うことで、寝袋は清潔になるだけでなく、失われた保温力も回復します。この記事を参考に、ぜひご自身の寝袋の洗濯にチャレンジしてみてください。
適切に手入れされた寝袋で、次のアウトドア活動もきっと快適に過ごせるはずです。
